防塵マスクで防災・アスベスト(石綿)飛散による健康被害の災害対策
防塵マスクで防災・アスベスト(石綿)飛散による健康被害の災害対策
アスベスト(石綿)飛散による健康被害が考えられる被災地では、防塵マスクで防災する必要があります。
建物の倒壊などによってアスベストなどの粉じんが飛散した場合、被災地で救援活動をするボランティア、復旧工事に携わる人は防塵マスクをしています。
同時に近隣住民もふつうのマスクではなく、防塵マスクで災害対策をする必要が求められるようになりました。
もくじ
実際に建物が倒壊した被災地では空気中のアスベストで健康被害が起きる場合があり、しかも症状によっては20年以上もかかって出るものもあるので、わかりづらいんですね。
実際にアスベストでどのようなことが起きるのか、これまでの実例から振り返ってみましょう。
空気中のアスベストで中皮腫・肺がん・肺線維症などに
空気中のアスベストなどを吸いこんでしまった場合、将来考えられる健康被害に中皮腫(悪性中皮腫)、肺がん(原発性肺がん)、肺線維症(じん肺)、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚などがあります。
中皮腫は「中皮」細胞から発生する「がん」で、良性と悪性があります。
発生する部位は胸膜中皮腫、腹膜中皮腫、心膜中皮腫、精巣漿膜中皮腫の4つがありますが、約9割が胸膜中皮腫とされています。
肺線維症(じん肺)の初期症状は軽い息切れと運動能力の低下ですが、喫煙者ではせきや呼吸するときに「ぜいぜい」という音が出ることがあります。
次第に呼吸が困難になり、重度の息切れや呼吸不全も起こしてしまうんですね。
良性石綿胸水とは胸水が確認されても、それから3年以内に悪性腫瘍が見つからない場合で、胸痛、発熱、咳、呼吸困難などの症状があります。
びまん性胸膜肥厚(びまんせいきょうまくひこう)とは、肺を包む胸膜が線維化して厚くなっていく病気です。
線維化が進行すると呼吸機能が低下します。
アスベスト対策の防じんマスクがすぐに在庫切れに
1995年(平成7年)1月17日に発生した阪神淡路大震災では、倒壊した建物の解体工事の周辺で高濃度のアスベストが飛散しました。
当時の粉じん対策は充分ではなく、防じんマスクがすぐに在庫不足になってしまった結果、支給も十分には行き届きませんでした。
しかも、粉じんは数日で消えるものではなく、何週間、場合によっては数か月も基準値を上回る状態が続くこともあります。
また、家族で石綿などのばく露があると、その人が作業具などを家庭内に持ち帰ることによって「家庭内ばく露」という問題も起きてしまうんですね。
当時、阪神淡路大震災のボランティアとして解体現場で作業していた男性が、石綿疾患の中皮腫と診断されて亡くなったという痛ましい例もありました。
被災地では行方不明者の捜索が最優先・瓦礫対策は後回しになる
2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災では、石綿を含んだ建材を使っていた建築物が地震や津波で破壊されてしまいました。
その結果、瓦礫や解体工事で出された建材のなかに、石綿を含んだ建材が大量に発生。
積み上げられた瓦礫の中には粉じんとして飛散しやすい種類も多くあったことが問題となりました。
しかし、行方不明者の捜索活動が最優先の課題とされるなか、瓦礫には手付かずの場所も多く残るという状態が長く続いてしまったわけですね。
息が苦しくならない排気弁付き防塵マスクがおすすめ
地震などの災害後、健康被害を防止するために公的機関が防じんマスクを配布する可能性もありますが、それを待っているあいだにアスベストを吸い込んでしまいますよね。
近くに工場があるなら防毒マスクも必要かもしれませんが、住宅地で被災することを想定するなら、まずは防塵マスクで防災しましょう。
防塵マスクにはいろんな種類がありますが、一般家庭なら国家検定規格であるDS2とN95の商品を選ぶといいでしょう。
解体などの粉じん作業をする場合ならこの上の性能を持つ、DS1の防塵マスクを選ぶ必要があります。
DS2とN95のくわしい特徴は、こちらで解説していますので参考にしてください。
防塵マスクメーカーでは3M社と重松製作所など
アスベストが空気中に飛散するなかで避難することも考えるなら、息が苦しくならない「排気弁付き防塵マスク」がおすすめです。
防塵マスクには取替え式と使い捨て式があり、3M社、重松製作所(SHIGEMATSU WORKS)、興研(KOKEN-LTD)、山本光学(YAMAMOTO KOGAKU)、トラスコ中山(TRUSCO)、クレトイシ(KURE GRINDING WHEEL)、モルデックスジャパン(MOLDEX JAPAN)、日本バイリーン(JAPAN VILENE COMPANY)など、多くのメーカーがあります。
品薄のときには知名度の高いところにこだわらず、いろんなメーカーで探してみるのがいいでしょう。
また、重松製作所のように在庫のなかからアウトレット品を出しているところもねらい目ですね。
いずれにしても、判断の基準はDS2とN95の規格に合格している防じんマスクであることです。
先に述べたように、「家庭内ばく露」を起こしてしまっては元も子もないですから、防塵マスクを使ったらそとで外して屋内に持ち込まないように注意してくださいね。